2019/06/30

[読書] 「うつ」は炎症で起きる(エドワード・ブルモア 著)


著者は、ケンブリッジ大学精神医学科長であり、神経科学とメンタルヘルス分野のエキスパートです。著者の主張は、「うつ」は脳を含む体の炎症が引き起こす、というものです。

この30年、医療は劇的に進歩してきましたが、「うつ」などの心の病気に関しては停滞している状況です。この原因として、「うつ」に関する適切なバイオマーカーが無いことが挙げられます。

例えば、糖尿病であれば血糖値、高血圧であれば血圧、などを用いて病気の兆候などを判断できます。一方、「うつ」に関しては脳内のセロトニンが不足している、などと言われますが、脳内のセロトニンの濃度を正確に測る安価な方法はありません。つまり、薬が効いているかどうかを客観的に判定する基準がありませんでした。

また、体の病気や怪我と「うつ」などの心の病気は完全に分離して扱われてきました。これは、デカルトの二元論に始まり、体を血と肉でできた機械とみなすことで医療は発展してきました。更に、血液脳関門によって、白血球などの免疫細胞や免疫タンパク質が脳への侵入を防いでいると考えられていたため、体と心を分けて扱う根拠となっていました。

しかし、最近の研究により、血液脳関門は免疫細胞や免疫タンパク質を通過させており、また、体の炎症が「うつ」の原因となっていることを示す証拠が出てきています。これらについては、神経免疫学という分野で研究が進んでいます。つまり、体の炎症が脳に伝わり、脳が炎症を起こした結果が「うつ」であると考えられます。

なぜ、体が炎症を起こすと「うつ」になるのか、現代の生活では「うつ」になるメリットは何一つありませんが、かつてサバンナで暮らしていたときには「うつ」になるメリットがあったようです。

サバンナで部族社会の一員として暮らしていたとすると、狩猟や部族間の抗争により傷を負うことがあります。傷を負えば感染症にかかる可能性が高まるため、免疫系が活発になり体に炎症反応が生じます。この時、傷の回復に専念するため、体を休めなくてはなりません。つまり、「うつ」の症状を出すことで体を休めることができます。

このようなことから、体の炎症反応の度合いを測定することが「うつ」のバイオマーカーとなる可能性があります。これについては、神経免疫学の進展を待たねばなりません。

体の炎症を抑えれば心の健康にも良さそうです。研究の成果が出てくるまで、10年単位の時間が必要となりますので、それを待ちたくありません。体の炎症を抑える方法として、ヴィム・ホフ・メソッドがあります。これについては、改めて書きます。

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