2018/02/02
[読書] 太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで(上) イアン・トール 著
アメリカでは第二次世界大戦に関する書籍はヨーロッパ戦線が中心で、太平洋戦争、特に海戦に関する書籍は少ないそうです。著者は海軍史家であり、そのような不満を解消するためにこの本を書きました。また、著者がアメリカ人であることから、太平洋戦争を米軍の視点で描いています。
この本では、マハンから語り起こしています。19世紀後半、船の動力が風から石炭に変わり、海軍の能力が大幅に向上しました。当時、軍隊の中心は陸軍であり、海軍については十分に考察されておらず、海軍を運用するための理論が求められていました。そのような時期に、マハンが「海上権力史論」を発表し、熱狂的に迎えられました。
マハンの主張を乱暴にまとめると、「主力となる強力な戦艦を中心として艦隊を組み、敵の艦隊を海上から一掃せよ」、となります。いわゆる大艦巨砲主義、艦隊決戦主義です。
日本もマハンを理論的支柱に据え、海軍の増強に努めた結果が日露戦争に現れます。僅か50年で近代的な海軍を造り上げた日本に対して、米国は尊敬と同時に脅威を感じます。米軍もマハンの主張に従っており、日本を仮想敵国とした海軍の増強に努めます。
続けて、この本ではアメリカの読者のために、日本の状況、陸軍と海軍の確執、パイロットの訓練(日中でも星が見える)、山本五十六の海軍での立ち位置と人柄について記述があります。また、真珠湾攻撃について次のような記述があります。
「海軍の名誉のためにいうが、山本は日本の宣戦布告が攻撃の少なくとも一時間前になるよう要求していた。」
(p.225から引用)
太平洋戦争は、真珠湾攻撃によって幕を開けます。世の中には、「米国は真珠湾攻撃を事前に知っていた」、との言説があるようですが、この本を読む限りでは、米軍は完全に不意を打たれています。
まず、米国はマハンの主張に従い、戦艦を中心とした艦隊を造り上げていました。それを有効な反撃もできずに撃沈させるなど、認められません。
また、真珠湾攻撃後、ハワイでの米軍の混乱ぶりからも実戦の準備はできていませんでした。例えば、偵察から戻った米軍機が飛行場へ着陸しようとしたところ、米軍の対空砲火により撃墜されています。
真珠湾攻撃を許した背景には、日本軍に対しての侮りがありました。「日本人がまともな航空機を作ることもできないし、良いパイロットに成れるわけがない」、といった具合です。
例えば、真珠湾攻撃の1年ぐらい前から、零戦は中国戦線に投入されており、絶大な戦果を上げていました。当時、その性能に並ぶものは無く、米軍にも報告されていましたが、米軍の上層部は報告に対して行動を取りませんでした。
このような要因が重なって、日本軍による真珠湾攻撃は戦術的には成功を収めます。敗北を喫した米軍の太平洋艦隊司令長官であったキンメルは解任され、ニミッツが任命されます。
ハワイに着任したニミッツは、被害の状況を調査した結果、まだまだ戦えると判断します。その理由は次のとおりです。
1.燃料タンクが無事であった。
450万バレルの燃料が無傷のまま残っていました。これを失った場合、ヨーロッパ戦線も維持しなくてはならないため、米軍は太平洋での戦いを数年程度、延期していたでしょう。
2.修理工場群も無傷であった。
真珠湾に沈んだ艦船を引き上げ修理することで、短期間の内に前線へ復帰できました。
3.訓練を受けた多くの将兵が生き残った。
真珠湾攻撃により、米軍は死者2000名、負傷者700名を出しました。もし、戦闘が外洋で行われていたならば、2万の将兵を失ったことでしょう。人員の補充には時間がかかります。
4.戦艦は損害を受けたが、米海軍としては損失ではなく、むしろ利益である。
真珠湾攻撃により、戦艦は航空機に対して無力であることが証明されました。その戦艦が沈められたのですから、航空部隊と潜水艦への切り替えが進みました。一方、日本軍は、大和、武蔵を始め、威風堂々たる艦隊が無傷で残っていたため、航空部隊への切り替えが遅れました。
5.空母は無傷で残った。
偶然、真珠湾への帰港が遅れたため、4隻の空母は被害を免れました。これら空母が太平洋艦隊の中心となります。
ニミッツは、残った空母と航空機を用いて、マーシャル諸島にある日本軍の基地を攻撃します。日本軍は不意を打たれ、米軍の被害は軽微でした。この攻撃以降、日本軍は占領した島の防衛に悩まされます。つまり、どこを攻撃されるか分からないが、使える戦力は限られている。
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